毎年夏になると、全国のあちこちから熱中症で大変な思いをされた方のニュースが飛び込んできます。特に高齢者と子どもさんのように、抵抗力が弱い立場にある人が要注意なのです。
平成29年も5月から9月までの間に5万2984人の方々が熱中症で救急搬送されました。
熱中症は正しい知識を身につけることで「防ぐことができる病気」と言われています。
この記事では、熱中症の症状と対策、応急処置について分かりやすく解説します。
大変な思いをされる方がひとりでも減るようにという思いでいます。
正しい知識を持てますように。お役に立てることを願っています。
日本の夏の特徴は、気温や湿度が高くて蒸し暑いことです。
熱中症は気温の影響だけでなく、湿度も大きな原因なのはご存知の通りですよね。
気温の上昇に加えて湿度の上昇が大きくなると、熱中症で救急搬送される人が急激に増えるのです。
それでは色々な熱中症の環境について、具体的に見ていきましょう。
熱中症はどんな場所でなりやすいの?
高温・多湿・風が弱い・輻射熱があるなどの場合
このような環境では、身体から外へ出る熱が減少します。
そうすると、汗の蒸発も不十分になります。
この状態では熱中症が発生しやすくなります。
発生しやすい可能性は次の通りです。
環境
・気温が高い
・湿度が高い
・風が弱い
・日差しが強い
・閉め切った室内
・エアコンがない
・急に暑くなった日
・熱波の襲来
からだ
・高齢者、乳幼児、肥満
・からだに障害のある人
・持病(糖尿病、心臓病、精神疾患など)
・低栄養状態
・脱水状態(下痢、インフルエンザなど)
・体調不良(二日酔い、寝不足など)
行動
・激しい運動
・慣れない運動
・長時間の屋外作業
・水分補給がしにくい
・環境(気温、湿度、輻射熱、気流など)
・行動(活動強度、持続時間、休憩など)
・からだ(体調、性別、年齢、暑熱順化の程度など)
熱中症の症状にはどんなものがあるの?
熱中症とは、高温多湿な環境に私たちのからだが適応できなくなったことによって出てきた色々な症状をまとめて「熱中症」といいます。
症状によって大きく3つの段階に分けられますが、意識がない・呼びかけに応じない・返事がおかしい・全身が痛いなどの症状が見られた場合は、速やかに救急隊を要請してください。
重症度・小
症状
・手足がしびれる
・めまい、立ちくらみがある
・筋肉のこむら返りがある(痛い)
・気分が悪い、ボーッとする
対策
涼しいところで一休み。冷やした水分や塩分を補給しましょう。誰かがついて見守り、良くならなければ病院へ。
重症度・中
症状
・頭がかんがんする(頭痛)
・吐き気がする・吐く
・からだがだるい(倦怠感)
・意識がなんとなくおかしい
対策
<重症度・小>の処置に加えて、衣服をゆるめ、からだを積極的に冷やしましょう。
重症度・大
症状
・意識がない
・からだがひきつる(けいれん)
・呼びかけに対して返事がおかしい
・まっすぐ歩けない・走れない
・からだが熱い
対策
救急車を呼び、最寄りの病院へ搬送しましょう。
こちらの記事も合わせて御覧ください
参考:子どもの熱中症の状態と注意点その症状と対策から予防まで
熱中症の具体的な対策は?
体調管理を上手にすることと、規則正しい生活をすることが第一です。
体調を健康な状態に保つことが効果的です。そのためには規則正しい生活が必要なのです。
次に、熱中症の発生前の対策と、発生後の対策を見ていくことにします。
熱中症の発生前の対策
環境の変化にも適応できる体調を作ることが基本です。自分が今置かれている環境の状態を把握して、適切なアクションを起こすことが最大の対策です。
特におすすめなことは、毎日の快眠・快食・快便、そして適度な運動が出来るように心がけることです。
暑い時期は、意識して水分をこまめに補給しましょう。適度な塩分も。
子どもへの水分補給についてはこちらで詳しく説明しています。
環境に配慮:普段から気温と湿度に気を配ると体調管理がスムーズになります。また、活動する場所についても気を配ることをおすすめします。室内であれば、エアコンや扇風機などを上手に利用しましょう。外出時であれば、直射日光をさけることやファッションやアイテムなどを上手に利用しましょう。
熱中症の発生後の対策
熱中症を疑った時には、放置すれば死に直結する緊急事態であることをまず認識しなければなりません。
重症の場合は救急車を呼ぶことはもとより、現場ですぐに体を冷やし始めることが必要です。
現場での応急処置
① 涼しい環境への避難
風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内等に避難させましょう。傷病者が女性の場合には、②の処置の内容を考慮して男女で救護することをお勧めします。
② 脱衣と冷却
・衣服を脱がせて、体から熱の放散を助けます。きついベルトやネクタイ、下着はゆるめて風通しを良くします。
・露出させた皮膚に濡らしたタオルやハンカチをあて、うちわや扇風機等で扇ぐことにより体を冷やします。服や下着の上から少しずつ冷やした水をかける方法もあります。
・自動販売機やコンビニで、冷やした水のペットボトル、ビニール袋入りのかち割氷、氷のう等を手に入れ、それを前頚部(首の付け根)の両脇、腋窩部(脇の下)、鼠径部(大腿の付け根の前面、股関節部)に当てて、皮膚直下を流れている血液を冷やすことも有効です。
・体温の冷却はできるだけ早く行う必要があります。重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。
・救急車を要請する場合も、その到着前から冷却を開始することが必要です。
③ 水分・塩分の補給
・冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらいます。冷たい飲み物は胃の表面から体の熱を奪います。同時に水分補給も可能です。大量の発汗があった場合には、汗で失われた塩分も適切に補える経口補水液やスポーツドリンク等が最適です。食塩水(水1リットルに1 ~ 2g の食塩)も有効です。
・応答が明瞭で、意識がはっきりしているなら、冷やした水分を口からどんどん与えてください。
・「呼びかけや刺激に対する反応がおかしい」、「答えがない ( 意識障害がある )」時には誤って水分が気道に流れ込む可能性があります。また「吐き気を訴える」ないし「吐く」という症状は、すでに胃腸の動きが鈍っている証拠です。これらの場合には、口から水分を飲んでもらうのは禁物です。すぐに、病院での点滴が必要です。
④医療機関へ運ぶ
・自力で水分の摂取ができないときは、塩分を含め点滴で補う必要があるので、緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処方法です。
・実際に、医療機関を受診する熱中症の 10%弱がⅢ度ないしⅡ度で、医療機関での輸液 ( 静脈注射による水分の投与 ) や厳重な管理 ( 血圧や尿量のモニタリング等 )、肝障害や腎障害の検索が必要となってきます。
医療機関へ搬送するとき
熱中症は、症例によっては急速に進行し重症化します。熱中症の疑いのある人を医療機関に搬送する際には、医療機関到着時に、熱中症を疑った検査と治療が迅速に開始されるよう、その場に居あわせた最も状況のよくわかる人が医療機関まで付き添って、発症までの経過や発症時の症状等を伝えるようにしましょう。
特に「暑い環境」で「それまで元気だった人が突然倒れた」といったような、熱中症を強く疑わせる情報は、医療機関が熱中症の処置を即座に開始するために大事な情報ですので、積極的に伝えましょう。
情報が十分伝わらない場合、(意識障害の患者として診断に手間取る等)、結果として熱中症に対する処置を迅速に行えなくなる恐れもあります。当時の状況や内容をあらかじめ整理して、医療機関へ伝えると良いでしょう。
出典:この項目は非常に大切なので、熱中症環境保健マニュアル 2018を参考に作成しました。
まとめ
体温調節機能が低下している高齢者や、体温調節機能がまだ十分に発達してい
ない小児・幼児は、成人よりも熱中症のリスクが高く、更に注意が必要なのです。
普段からできることを、これ以上ないくらいにまとめたものがこれです。
(1)暑さを避けましょう。
・行動の工夫
・住まいの工夫
・衣服の工夫
(2)こまめに水分を補給しましょう。
(3)急に暑くなる日に注意しましょう。
(4)暑さに備えた体づくりをしましょう。
(5)各人の体力や体調を考慮しましょう。
(6)集団活動の場ではお互いに配慮しましょう。
誰でも気をつけていたつもりでも、体調を崩す時がありますよね。
特に抵抗力が少ない子どもや高齢者には、特別な配慮が必要になります。
暑い時期は、ぜひとも賢く乗り越えましょうね。応援しています。
<この記事は次のサイトを特に参照しました。>
★厚生労働省:熱中症関連情報サイト
★環境省:熱中症予防情報サイト
★日本気象協会:熱中症ゼロへ
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